法定耐用年数とは
財務省が定めた資産ごとの耐用年数のこと。法人税の計算上は原則としてこの法定耐用年数で減価償却しなければならず、不合理でない限り会計上もこの耐用年数を使うことが一般的。各資産の法定耐用年数表は以下のサイトで確認できる。
法定耐用年数の概要
会計における原則は、資産ごとにその使用可能期間を合理的に見積り、その使用期間を耐用年数として減価償却を行う。しかしこれでは企業側の裁量が大きく、耐用年数を意図的に短くすることで減価償却費を多く計上し、税逃れ(【損金】の先取り=課税の先送り)を図ることができてしまう。そこで、国で一律の耐用年数ルールを設け、「これ未満の耐用年数は税金計算では認めないよ」と定めている。
たとえば法定耐用年数が10年の建物を5年で定額償却すると、5年目までは本来の2倍の減価償却費が計上されるが、税金計算上で損金にできるのは半分まで。損金にできなかった残りの半分は、会計上減価償却費が終了する5年目以降に繰り越され、10年目まで本来通り損金算入されていく。
ただし、逆に法定耐用年数が5年の資産を10年で償却すると本来の半分の減価償却費となるが、この場合は何の調整もできず税金計算上も10年償却となる。納税者が得をすることは認めないが、損をするのはどうぞどうぞというわけだ。
会計における耐用年数
法定耐用年数はあくまで税務上の概念であり、会計上の原則は上記のとおり資産ごとに耐用年数を合理的に見積もらなければならない。しかし、以下の理由で会計上も法定耐用年数を使うのが一般的である。
- 経理も資産の耐用年数なんて合理的に見積もれない。
- 大量の固定資産で【税会不一致】を発生させると、決算のときに死人が出る。
- 法定耐用年数は国が大々的に調査して定めており、そうおかしなものではない。
ということで、明らかに不合理なケースでない限り、会計上も法定耐用年数を使うのが一般的。
ちなみに実務的に一番重要な理由は2である。この辺の感覚のない税理士が上場準備会社に無茶を言って大変なことになるケースがあるので触れておくが、いくらちゃんとした償却システムを導入したところで、決算における作業は税会不一致によって爆発的に増加する。税会不一致させる資産数は可能な限り絞り込むのが関係者全員の身のためである。
明らかに不合理なケースとは
よくあるのが、【定期借地契約】で20年後に退去・更地返還義務がある場合の建物。この場合は確実に20年間しか使えないため、20年を大きく超える耐用年数を選択することは明らかに不合理である。泣く泣く税会不一致させることになる。
法定耐用年数表にない資産
法定耐用年数表にない資産の税務上の償却年数は、以下のように考える。
- 類似資産の法定耐用年数を使用する
- 合理的に見積もった耐用年数を使用する
結局税務調査においても、法定耐用年数表にない資産の耐用年数を否認することは簡単ではない。合理的な判断基準を用意し、調査官に堂々と説明できるようにしておこう。
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