包括利益とは
一定期間の純資産の変動のうち、株主などの持分所有者との直接取引(増資や配当など)以外の要因によるもの。「当期純利益」と「その他の包括利益」から構成される。
P/Lに計上されるのは【発生主義会計】において実現したと認められる損益であり、利益剰余金の増減という形でB/Sに反映される。そのため長らく「資産=負債+資本」という公式が成り立っていたが、、【その他有価証券評価差額金】のように「実現したとは認められないけど資産負債の額は確かに変動しているもの」をきちんとB/Sで認識しましょうということなり、資産負債の差額と資本(株主資本)の額が一致しなくなってしまった。そこで、P/Lに計上される損益とは別に、P/Lに計上されない未実現の損益を「その他の包括利益」と呼ぶことにし、「当期純利益」と「その他の包括利益」を合算した概念として「包括利益」が誕生した。
確かに資産と負債の額を正しく表示することは重要であり、その結果として包括利益という概念が登場するのは当然の成り行きである。しかしながら、長らくほとんどの会社では当期純利益(少し前でいうところの少数株主損益調整前当期純利益)と包括利益の差額は重要性の範囲内かというほど僅少であり、非常に難解で手間がかかる割にあまりやりがいを感じない開示作業となっていた(一応「重要な差がない」という情報が大事だったわけだが)。
近年は「退職給付に係る調整累計額」が登場したお陰で、少しはやりがいのある開示になってきている。
なお、包括利益が登場するのは【連結決算】だけで、会社法上の要請により、個別会計上は包括利益の表示が禁止されている(【連単分離】)。
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