ヤマハ発動機、税務調査で広告宣伝費等が否認される
バイクのヤマハ発動機が税務調査で7.2億円の申告漏れを指摘されたそうです。
ヤマハ発動機、7.2億円申告漏れ 名古屋国税指摘(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASK2S3RVQK2SOIPE00C.html[外部]
同社によると、ホームページ掲載用アニメなどの映像制作にかかった「広告宣伝費」約2億円のほか、開発用の設計ソフトウェアにかかった費用などの約2億円をそれぞれ、13年12月期に経費として計上。だが、これらの映像やソフトは翌年も使われたことから、14年12月期までの2年間にわけて計上するように国税局から指摘された模様だ。
このニュースを解説します。
本記事は税理士・古旗淳一が限定された情報からの私見を述べるものであり、本件の個別事情を考慮したものではありません。
広告宣伝用アニメーションなどの期間帰属
広告宣伝費の税務処理
ほとんどの広告宣伝費は使用期間が短いため、使用した期の【損金】に計上できます。ただし、1年を超えて使用されるものは、その使用期間で償却します。使用期間が明確にできない場合は、「著作物」としての法定耐用年数5年が使われます。
ホームページ(Webサイト)の場合は?
ホームページは頻繁に更新されるものであるため、通常は1年を超えて使用されないとみなされます。よって、通常は制作した期の損金として落とせます。
ただし、ホームページのフォームから顧客データベースに直結しているなど、ソフトウエアと連動している場合には、ソフトウエアの法定耐用年数5年を使います。(ソフトウエア部分とホームページ部分を区分することも可)
今回の場合は?
ヤマハの事例はアニメーションなので、通常は著作物として無形固定資産に計上すべきものですが、ホームページに利用されたことで判断が難しくなったのではないかと思います。
しかし、当初想定した掲載メディアがホームページだったというだけで、アニメーションとしての価値が1年を超えて残るものであれば、ソフトウエアと同様にホームページそのものとは分けて考えるべきかと思います。
記事を見る限り、税務調査では耐用年数は2年と認定されたようです。これは当初から掲載期間が約2年の計画があったのか、それとも実績を振り返って約2年使われたからなのかはわかりませんが、申告段階では実績を取れません。実務的には過去の類似作品の使用期間を参考にするか、安全をみて法定耐用年数の5年を選択することが多いのではないかと思います。
もしかしたら、本件は単なるミスというよりも、当初は1年以内に掲載終了する予定だったものが伸びただけなのかもしれません。そうなると当初の申告段階では正しくやりようがないですよね。
ヤマハ発動機としては追徴課税もさることながら、何だか脱税したようなニュースになってしまったことが気の毒です。
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