引当金とは
発生の可能性の高い将来の費用・損失に備える負債(または資産のマイナス項目)の種類。【発生主義】と債務確定主義の典型例であり、そのほとんどが税務では認められない(【税会不一致】)。
引当金の役割
過去に生じた理由によって将来に支出が生じる場合、発生主義の観点からすると、その費用は支出の期ではなく、その支出の理由が生じた期の費用とすべき、という考え方に基づく。この期間調整をするのが引当金の役割である。
たとえば「退職金」は、退職時に初めて支払う必要が生じたのではなく、退職給付規定に基づいて過去の勤務期間にわたって少しずつ積み立てられた支払義務が、退職時に一気に支出として発生したものである。発生主義の考え方からすると、この場合は入社から退職までの長い期間にわたって少しずつ費用計上されるのが正しい。
この少しずつ費用計上される相手勘定として、引当金が負債として溜まっていく。
引当金の要件
将来発生しそうな支出なら何でもかんでも引当金を計上するわけではなく、以下の4要件を満たすと計上されることになる。
- 将来の特定の費用または損失であること
- その発生が当期以前の事象に起因していること
- 費用または損失の発生の可能性が高いこと
- その金額を合理的に見積もることができること
したがって、将来発生する可能性が低い地震災害などは引当金の対象にはならないし、過去の事象に起因しない部分は引当金には計上しない。
引当金と税務
引当金は、貸倒引当金、退職給付引当金、ポイント引当金など様々な種類があるが、そのほとんど(貸倒引当金と返品調整引当金以外のすべて)は繰り入れても税務上費用にできない。
これは、会計は発生主義に基づいて経済実態をタイムリーに表示することに主眼を置いているの対して、税務は公正で客観性の高い税ルールを志向しているため、法的に支払義務が確定しない限り【損金】計上できないという、それぞれの考え方の違いによる(債務確定主義)。