経理高速化のPDCAにおいて月次決算が「C」であるワケ

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経理高速化のPDCA

経理高速化は小さなカイゼンの積み重ねです。

「こうしたらもっと速くなるのではないか」という仮説を立て、実際にそれを実行し、その効果を検証します。このようなPDCAサイクルを個人でもチームでも回していきましょう。

経理部長さんからお話を聞くと、毎月の経理部内会議で効率化を訴えているが、いつまでたっても月次の締めは早くならないし、残業時間も一向に減らない、という嘆きを伺います。原因は一様ではないとは思いますが、ほとんどの場合で「PDCAの定義の仕方」に誤解があるように思います。

結論からいうと、経理高速化における「月次決算」とは、PDCAのC、すなわちCheckに該当します。先入観で「月次決算は実作業なのでDだ」と考えてしまうと、計画的に経理高速化を実現することはできません。

なぜ月次決算がCに該当するのか、今回をその理由を説明しましょう。

1.経理高速化にとって月次決算がDではない理由

1-1.目的がPDCAを定義する

PDCAはご存じのとおり、Plan-Do-Check-Actionの頭文字を取ったものです。今回はPDCAの詳細な説明は省きますが、重要なことは目的を実現するためのPDCAである、ということです。目的の実現に必要な計画→実行→反省→対策という順番を意識的に実施することが大事なのであって、PDCAそのものをこれ見よがしに実行することが大切なわけではありません。

したがって、PDCAには目的を実現するために合理的であることが求められます。目的を実現するための標準的な手順を整理し、そのマイルストーンとしてPDCAのそれぞれを組み込んでいきます。

1-2.経理高速化は初期投資が勝負

さて、経理高速化の要諦は、手を素早く動かすことではありません。経理を高速化するには1人ひとりの集中力以上に、新しいExcelシートを作りこんだり、記帳ルールを改正して周知したりといった仕込みの作業や、他部署への協力を依頼するなどの根回し的な作業、あるいはシステム投資などの業務の抜本的な転換が必要になります。これらは一見非効率でムダな作業にも見えますが、結果として月次決算をスムーズに進める初期投資的な最重要作業です。

経理高速化とはすなわち、この初期投資的な作業をどううまく実施するかということに尽きるのです。「段取り八部(仕事の成果の80%は事前準備で決まる)」という言葉がありますが、経理高速化もまた事前準備で成否が決まるのです。

1-3.月次決算は経理高速化の難所

経理高速化は1カ月かそこらで実現できるものではありません。時にはシステムの入れ替えや業務分担の整理によって大幅な高速化が図れる場合もありますが、基本は毎月毎月の小さなカイゼンをコツコツ積み上げていく地味な(それでいてやってみると実は楽しい)作業です。要するに、一カ月という単位を1タームとして繰り返すことになります。

では、その一カ月のうち、一番忙しい時期はいつでしょうか。ほとんどの場合は月末の支払いと、そして月次が締まる前であろうかと思います。この期間に、手間のかかる経理高速化の初期投資作業を実施することは、あまりにも非効率です。したがって、月末の支払いまでには経理高速化の大半の作業を終わらせ、支払作業から月次決算の間は効果確認と更なる改善策の検討に使いましょう。つまり、経理高速化の正念場は前月の月次決算が終わった直後から始まり、当月の実作業が始まる直前には片付けるべきなのです。

2.経理高速化のためのPDCAとは

経理高速化の流れに、マイルストーンとしてのPDCAを組み込んでいくと、以下のとおりとなります。

2-1.Plan 前月の月次決算直後

前月の月次が締まった瞬間から次の月次決算が始まります。

まずは、前月決算作業の記憶が薄れないうちに「振り返り」をしましょう。前月決算の反省と、新しく見つけた「この作業はこうすればもっと早くできるのでは?」というアイディアを整理し、「当月は月末までに何をするか、うまくいったときにどれだけの効果が期待できるか」をまとめます。計画は9割以上が月末までの事前準備の計画です。月次決算としての本作業スケジュールは、最初のうちは「どの作業にどのぐらいの時間を確保しておくか」と「月次後に想定通り記帳できていることをどうチェックするか」程度で十分です(高速化が進むと自然と日程調整したくなってきますが、最初は無理しなくてもいいです)。これらはあとで振り返られるようメモに残しておきましょう。

事前準備も時間が掛かりますので、抱えている全部の業務をカイゼンすることは困難です。計画の段階で「次月カイゼンするのはこれ」というものを選びましょう。カイゼンのハードルが低い業務で結構です。

チームとして経理高速化に挑む場合は、月次の締めの翌々日に計画発表会をしましょう。翌日は万一決算が締まらなかった際のバッファーと、各自が発表資料を準備する時間として活用します。

2-2.Do 月末支払or月次決算作業が始まるまで

PDCAの核となるDoは、支払業務がある場合は月末の支払作業より前、ない場合は月次決算作業開始までの期間に実施する事前準備作業です。理由はもう説明の必要はないと思いますが、事前準備こそ経理高速化の核心だからです。

主に前月の経理で使用したデータを使って新しいExcelシートのリハーサルをしたり、次月からの記帳ルールの作りこみ、周知徹底を行います。

この期間もそこまで暇な時間ではないでしょうが、この期間を疎かにして経理高速化が実現することは絶対にありません。まさに正念場の気持ちで頑張りましょう。

2-3.Check 月次決算作業と反省点の洗い出し

準備万端で支払業務や月次決算を迎えたら、あとは当初の見積り通りの時間で作業が完了するかを、実際にやってみて点検するだけです。思った通りのスピード感で業務が完了したときの快感は、やみつきになるほど気持ちがいいものです。実作業に掛かった時間はメモに残しておきましょう。

ただし、実際には一度だけで完全な高速化が実現することはありません。実際にやってみると「ピボットテーブルを使ったけど設定に案外時間が掛かるから、ここはSUMIFに代えよう」とか「今の作業はポカヨケを設置するともっと効率的に作業できそうだな」といった発想が自然と出てきます。これらのアイディアは作業をする中で必ずメモしておきましょう。

なお、Checkという点では「想定通りの記帳にちゃんとなっているか」というチェックは忘れないようにしましょう。どんなにスピーディに仕訳が切れても、結果としての会計数値が全然間違ったものでは意味がありません。

2-4.Action 次のカイゼンポイントの整理とアイディア出し

月次決算が終わったら、計画と作業中に残したメモを元に、目標がどの程度達成できたのか、達成できなかった原因は何か、その原因に対する対策はどんなものが考えられるか、さらなる高速化のためにどんな事前準備ができそうか、今回の成功例を他の業務に応用できないかなど、次につながるアイディアを考えます。

たとえば達成できなかった理由として「他部署からデータが届くのが遅かったから」という原因があれば、予定通りデータをもらうためには何をすればよかったか、他のルートから同じデータをもらえなかったか、類似データで代用できなかったか、データづくりを経理で代行できないかなど、アイディアを掘り下げていきましょう。

この論点整理とアイディアが次のPlanに直結します。真剣に取り組めば次の課題とその克服のアイディアがたくさん出てきます。その中から次に手を付ける課題を選んでいきましょう。

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