泊りがけの出張でホテルに泊まり、翌朝ホテルで朝食を取ることがあります。
ホテル代は当然旅費交通費で処理されるとして、朝食代は旅費交通費に含まれるのでしょうか?
間違えると税務調査で損金から外されたり、従業員や役員の給与として認定されたりするので、ちょっと怖いですよね。
今回はそんなホテルでの朝食代について、判断方法を確認しましょう。
本稿は公認会計士・税理士の古旗淳一が、一般的な取引を想定した私見を執筆しております。
1.会社が負担すべき費用、すべきでない費用
まず、社員が支出する費用のうち、どのようなものが会社で負担すべきであり、どのようなものが負担すべきでない(してはいけない)のかを整理しましょう。
1-1.仕事のために支出することになった費用
出張のホテル代や交通費など、仕事のために支出することになった費用は、当然に会社が負担すべきものです(じゃないと辞めちゃいますよね・・・)。
もっとも、仮に出張目的の宿泊であっても、あまり高いシティホテルでは税務調査で否認されることがあります。
1-2.仕事がなくても支出する費用
仕事があってもなくてもどっちみち支出する費用であれば、会社の経費にすることは難しくなります。会社が社員の生活費を負担しているようなので、認定給与になるリスクが高いでしょう。
たとえば、社員食堂の昼食を無料にするのは難しく、「半額会社支給、かつ、月額3,500円まで」という縛りが発生します(最近IT界隈では無料社食が流行っているようですが、給与から天引きされているのでは?という気がします)。
1-3.両者の微妙なライン
さて、出張先の朝食は微妙なラインです。出張がなくても朝ご飯は食べますが、家で食べれば安く上がるのに、出張のせいでそれができなくなりました。でも、家で食べる納豆ご飯よりは豪華な朝ご飯ではあります。
この辺の問題は「残業した従業員の夜食」にも言えることです。果たしてどのように判断すればよいのでしょうか?
2.一般常識的に考えよう
出張先のホテルの朝食は微妙なラインではありますが、結局のところ「一般常識照らして、会社が負担することが合理的か否か」で判断して差し支えないでしょう。
出張先では自炊して食事することは基本的にできないですし、朝食分までお弁当を持って行くことは通常考えられないので、原則として、会社経費になると考えましょう。
ただし、以下のように直接は会社経費にできない場合もあります。
3.出張手当(日当)がある場合は直接経費にはできない
それは、出張者に対して出張手当を支給している場合です。
出張手当は給与とは別枠で、出張時に係る「微妙なラインの諸費」を概算で支給するものです。つまり、通常は出張手当には朝食代も含まれており、実費を会社で精算してしまうと二重支給したことになります。よって、出張手当を支給している場合は、直接経費にすることはできません。
ともあれ、出張手当は全額経費にでき、社員側では給与所得にならず、さらに消費税の仕入税額控除までできる便利なものです。きちんとした出張規定を作っておく必要がありますが、損をすることはありません。
おわりに
経理では細かいところで「あれ?この場合どうなるんだ?」と思うことがたくさんあります。そのひとつが今回の出張朝食代でしょう。
前任者と同じ経理処理をしてそれで終わりではなく、「本当にあっているのかな」と思って検索してみると、経理スキルはどんどん上がっていきます。ぜひ好奇心を持って実務に当たりましょう。
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