【法人税、住民税及び事業税】の種類一覧と計算方法

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法人税、住民税及び事業税

この国には様々な税金が定められており、会社にも本当に様々な税金が課せられます。
経理は社内でも法人関連税制にもっとも詳しい部署として期待されることが多いですが、如何せんなかなか覚えづらいのが実情です。

そこで今回は、いわゆる「法人税、住民税及び事業税」と呼ばれる(大きく分けて)3つの税目を解説します。これらの税金は会社にとって有数の高額支出ですので、しっかり覚えておきましょう。

1.法人税、住民税及び事業税の分類

法人税、住民税及び事業税を細かく見ていくと、驚くほど様々な課税のされ方があります。それぞれ会計や税務の考え方は異なり、表にすると以下の通りになります。

大分 税目 管轄 細目 勘定科目 課税標準 税効果会計 金算入
法人税 法人税    (通常の法人税) 法・住・事 所得 対象 不算入
留保金課税 法・住・事 留保金 対象外 不算入
地方法人税   法・住・事 法人税額 対象 不算入
住民税 道府県民税  都道府県  法人税割 法・住・事 法人税額 対象 不算入
均等割 法・住・事 資本金等の額
対象外 不算入
市町村民税  市町村  法人税割 法・住・事 法人税額 対象 不算入
均等割 法・住・事 資本金等の額
従業者数
対象外 不算入
事業税 事業税   都道府県   所得割 法・住・事 所得 対象 算入
付加価値割 租税公課 付加価値 対象外 算入
資本割 租税公課 資本金等の額 対象外 算入
地方法人特別税 都道府県   法・住・事 所得の額
(標準税率)
対象 算入

平成29年3月現在。
「法・住・事」はP/L科目「法人税、住民税及び事業税」を示している。
事業税に関しては、電気供給業、ガス供給業、保険業の場合は「収入割」が課される。

2.法人税

いわゆる法人税には、法人税と地方法人税があります。いずれも国税ですので、税務署が管轄しています。

1-1.法人税

国の税収を支える大変重要な税であり、会社にかかる税の中では最大のものです。

通常の法人税の他に、「留保金課税」が課される場合があります。

1-1-1.通常の法人税

課税所得(益金―損金 税務上の税引前当期純利益)に対して税率を掛けて計算します。

平成29年3月末決算であれば、原則として税率は23.4%ですが、中小法人(資本金1億円以下などの要件を満たす会社)の場合、800万円以下は15%で計算されます。

1-1-2.留保金課税

特定同族会社(資本金1億円超などの要件を満たし、かつ、1名の株主グループに株式の50%超を保有されている会社)で、課税所得に対して一定以上の配当を出していない場合、通常の法人税に上乗せして税が課されます。

こちらは必ずしも利益と連動しない税なので、税効果会計の対象にはなりません。

2.住民税

法人も住民ですので、各自治体の住民税を納めます。原則として都道府県と市町村ごとに納めますが、東京23区(東京都特別区)だけは両者を合算して扱います。

2-1.道府県民税

都道府県の「住民」に課される税金です。正式名称が「道府県民税」で、東京都民には「都民税」として準用されるという作りになっています。

各都道府県の県税事務所(都税事務所、道税事務所、府税事務所)が管轄しています。

法人に課される道府県民税には、所得の額に連動する「法人税割」と、連動しない「均等割」の2つがあります。(「利子割」は廃止)

2-1-1.法人税割

法人税の額に対して一定税率を掛けることで税額を算出します。法人税額が所得に連動するため、こちらも必然的に所得連動となります。

平成29年3月末決算であれば、税率は3.2%と地方税法で定められています。ただし、自治体の条例により4.2%まで引き上げることが可能です(超過税率)。

2-1-2.均等割

法人の資本金等の額(税務上の資本金)によって税額が決められます。

赤字でも必ず発生し、所得の額とは連動しません。そのため、税効果会計の実効税率算定では外されます。

法定実効税率の算定式については、【税効果】すぐ使える法定実効税率の計算シート&解説をご参照ください。

2-2.市町村民税

道府県民税の市町村版です。「法人税割」と「均等割」があることは一緒ですが、それぞれ税率が異なります。

管轄は各市町村の市役所(役場)です。

2-2-1.法人税割

平成29年3月末決算であれば、原則として法人税額の9.7%ですが、こちらも市町村の条例で12.1%まで引き上げることができます(超過税率)。

2-2-2.均等割

市町村民税の均等割は、資本金等の額だけでなく、従業者数によっても変動します(50人以下or超の2段階)。

また、国が定めた標準税率の1.2倍まで条例で増額することが可能です。

2-3.東京23区の場合

東京23区は「東京都特別区」と呼ばれ、市町村民税が道府県民税(都民税)に吸収されています。よって、納税は市町村民税分も都税事務所が管轄しています。

とはいえ、単純に両者を合算しただけですので、23区内だから得かどうかという差はありません。

3.事業税

いわゆる「広義の事業税」は、「狭義の事業税」と「地方法人特別税」に分かれます。
いずれも都道府県の県税事務所が管轄し、道府県民税と一緒に納付します。

なお、法人税や住民税とは異なり、損金に算入します。これは都道府県が提供する公共サービスの対価としての性格が強いためとされています。
ただし、発生時ではなく申告時の損金であるため、前期の確定納税額と当期の中間納税額が当期の損金になります。

3-1.事業税

資本金の額が1億円以下の場合は、所得額に対して課される「所得割」のみですが、資本金1億円超になると外形標準課税(「付加価値割」と「資本割」)が追加されます(ただし、所得割の税率は下がります)。

なお、一部業種には「収入割」が課されます。

3-1-1.所得割

所得の額に税率を掛けて計算します。税効果会計の対象になります。

平成29年3月末決算の場合の所得割の税率は、外形標準課税適用法人で0.7%、非適用法人で3.4%です。ただし、こちらも条例で超過税率を設定することが可能で、外形標準適用法人は2倍、非適用法人は1.2倍まで引き上げることができます。
また、800万円以下の所得に対しては累進課税のような段階的な軽減税率が設定されています。

行政サービス対価としての意味合いは強いものの、完全に所得と連動するため、「法人税、住民税及び事業税」の科目で計上されます。

3-1-2.付加価値割(外形標準課税)

外形標準課税の1つです。

付加価値とは、繰越欠損金調整前の課税所得(単年度損益)に、人件費、支払家賃、支払利息の額を足し戻した金額であり、これに税率1.2%(平成29年3月末決算の場合)を掛けて計算します。

たとえば役員報酬をたくさん取って法人税を下げても、この付加価値割では足し戻されるため、意味はありません。課税所得が赤字でも課税される可能性があります。

所得水準とある程度の相関性はあるものの、連動しているとも言えないため、税効果会計の対象外です。しかも、行政サービス対価としての意味合いから、租税公課に計上されます。

3-1-3.資本割(外形標準課税)

もう1つの外形標準課税です。

資本金等の額(税務上の資本金)に0.5%を掛けて計算します。こちらも赤字でも必ず発生します。

所得水準はまったく無視されるため、税効果会計の対象外です。また、こちらも行政サービス対価としての意味合いがあるということで、租税公課に計上されます。

なお、組織再編などにより資本金等の額が少ない場合、資本金+資本準備金の額と比較し、いずれか大きい額を課税標準とすることになりました。かつては合併によって大幅な節税ができたのですが、今は限度が設けられてしまいました。

3-2.地方法人特別税

事業税所得割から一時的に切り離された税で、所得割と同じような扱いがされています。

課税標準は「超過税率を上乗せしなかった場合の所得割額」(標準法人所得割額)で、外形標準課税適用法人は標準法人所得割額414.2%、非適用法人は43.2%を掛けて計算します。

この税は地域ごとの税収格差に対応するため、丸々その自治体の取り分になる所得割の額を減らし、一部を国が集めたうえで各地方に再配分するために創設されたものです(よって国税です)。

その後平成26年に地方法人税が創設され、国が直接同じ役割の税を徴収することになったため、平成31年10月以降開始する事業年度から廃止(所得割に戻される)ことになっています。
(本当は平成29年度からの予定でしたが、消費税増税延期に伴いこちらも延命となりました)

ASBJ、【法人税、住民税及び事業税】の会計基準を公開(2017年3月の経理ニュース)
【税効果】すぐ使える法定実効税率の計算シート&解説

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