簿記には似たような科目があり、違いを整理しておく必要があります。
今回は「前受金」と「前受収益」の違いを理解して、本番で選択を間違えないようにしましょう。
目次
1.前受金の整理
1-1.前受金とは
前受金は、商品を含めた物の売却や、サービスの提供において、実際の取引(売却・提供)の前に代金を受け取った場合に使う負債科目です。
簿記3級では商品売上の「内金」や「手付金」という形で代金の一部を受け取ったケースが多く出題されておりますが、全額を受け取った場合も前受金を使用します。
売掛金と未収入金のように、商品の売却か否かで区別されず、すべて前受金で処理します。
1-2.前受金が発生するケース
以下のような場合で、まだ物の引き渡しやサービスの提供をしていないのに代金の一部または全部を受け取ったときに、前受金勘定で処理します。
- 商品の売上
- 有価証券の売却
- 固定資産の売却
- 期間契約ではない受取手数料など
- 契約期間が始まる前の受取家賃など
家賃などは期間の契約ですが、契約期間が始まる前の収益は前受金で処理します。
このうち、出題されるのはほとんどが売上です。
2.前受収益の整理
2-1.前受収益とは
前受収益は、一定期間の期間契約を結んでおり、すでに代金を受け取った場合において、契約期間が始まったものの期間が終了していないときに発生する負債科目です。
契約期間が始まっていても、まだ到来していない期間の部分の金額は次の期の収益にすべきですので、前受収益の科目を立てて収益の繰延計上を行います。
2-2.前受収益が発生するケース
以下のような場合には、前受金ではなく前受収益が計上されます。
- 決算日をまたぐ契約期間の地代や家賃(先払い)
- 決算日をまたぐ契約期間の受取手数料(先払い)
上記のうち、3級で出題される受取手数料はビジネスの紹介手数料であることが多く、これは期間契約ではありません。
したがって、頻出するのは地代と家賃のケースです。
3.前受金と前受収益の見抜き方
3-1.前受金になるワード
問題文に以下のワードがあれば、前受収益ではなく前受金です。
- 内金
- 手付金
3-2.前受収益になるワード
問題文に以下のワードがあれば、前受金ではなく前受収益です。
- 繰延計上(繰り延べる)
- 月割
※簿記3級では日割計算は出題されません。
3-2.その他の見抜き方
「物の売却」には前受収益は使わないので、商品の「売上」や有価証券・固定資産を「売却」する場合は前受金になります。
収益は両方の可能性があるので難しいですが、家賃や地代であれば未収収益である可能性が高いでしょう。
契約期間が満了していれば前受金、していなければ前受収益ですので、あとは問題文や選択肢をよく読めば必ず答えが出ます。落ち着いて取り組みましょう。
関連問題
論点を整理した後に関連問題を確認することで、知識を定着させることができます。
簿記3級 Level2問題
内金・手付金の受取りの仕訳問題
商品250円の注文を受け、内金として現金100円を受け取った。仕訳は?
簿記3級 Level3問題
収益の繰延べの仕訳問題
当期に受取り、収益計上されている地代100円のうち、当期分は30円であり、残りは来期分である。決算整理仕訳は?