
キャッシュフローを組まなければならないけど、キャッシュフロー精算表を1から作るのは大変だ!とか、今使っている精算表をもっと改良できないか?とお考えではないでしょうか。
今回は大きな会社でも小さな会社でも自在に使えるキャッシュフロー精算表のサンプルを公開し、そこに施された経理高速化のための仕掛けについて解説します。本記事を読めば、キャッシュフロー精算表作成もサクサク進むでしょう。
以下をクリックするとExcelファイルで作成されたサンプルシートがダウンロードできます。
Y300 キャッシュフロー精算表のサンプルシート(Excelファイル)
キャッシュフロー精算表のサンプルであり、例として簡便的な仮数値を入力してあります。
※マクロは一切使用しておりません。
社内のセキュリティ規則によりExcelファイルをダウンロードできない方はこちらをご覧ください。
キャッシュフロー精算表のシート構造については本稿では触れませんので、「キャッシュフロー精算表の計算構造がスッキリわかる話」をご参照ください。
以下では、キャッシュフロー精算表をより効率化するための仕掛けについて解説します。
1.キャッシュフロー精算表を効率化する仕掛け
1-1.B/Sは科目を絞る
まず、キャッシュフロー精算表のスタートであるB/Sの増減分析表については、極力科目を集約して絞り込みましょう。
よく会計システムからCSV出力した詳細なB/Sをそのまま使う人がいますが、これをしてしまうとキャッシュフロー精算表の上段だけで画面に収まりきらなくなってしまい、何をしているのかわからなくなる元になります。適当に集約した方が簡単です。
集約のポイント
効率的な集約のコツは、CF分析上で同じ扱いになる科目をまとめることです。
たとえば、有形固定資産や無形固定資産はそれぞれまとめて扱いますので、B/Sの時点からまとめてしまって問題ありません。
また、繰延税金資産/負債は、連結であれば資産負債&長期短期で最大4科目登場しますが、CF振替においては何の違いもなく、むしろまとめて相殺してしまったほうが簡単です。
それ以外にも、金額的に小さい雑勘定は「その他」に収めてしまいましょう。
集約の方法
集約にはSUMIF関数を使うと簡単です。生データを貼り付けてSUMIF集計するのであれば、B/S金額そのものに監査修正が入っても簡単に直すことができます。具体的な集約方法は別途記事を書くつもりですが、SUMIF関数自体については以下をご覧ください。
1-2.負債・純資産の残高はマイナス表記する
同じくB/Sの増減分析分析表についてですが、負債・純資産残高はマイナスで表示しましょう。
資産と負債・純資産は、それぞれ増減に対するキャッシュフローへの影響が異なります。そこで、たとえば資産の増加と負債の増加について、プラスマイナスが真逆になるようにしておくことで、貸借を意識せずにキャッシュフローに換算できるようになります。
資産と負債・純資産の増減に対するキャッシュフローの違いについてピンと来ない方は、「初めてキャッシュフロー計算書の作り方を学ぶ前に読む話」をご覧ください。
また、資産残高をプラス、負債・純資産残高をマイナスで表現する方法について詳しくは、「貸借をプラスマイナスで表現すると決算作業がサクサク進む」をご覧ください。
総資産と負債・純資産の合計が一致していれば、「合計」はゼロになります。これは、繰延税金などで資産と負債を相殺していても必ずゼロになります。
1-3.1振替列に1分析シート
さて、キャッシュフロー精算表はまずB/S科目の増減差額を算出し、それをキャッシュフローに換算して、増減要因の分析結果によって各キャッシュフロー科目に振り替えていきます。
この増減要因の分析をするためには、基礎資料となる分析シートが大量に必要になります。分析シートが増えれば増えるほど、キャッシュフロー精算表は複雑になっていきます。
そのような中で作業を高速化するためには、可能な限り情報をスッキリ整頓しておく必要があります。そこで、各振替列ごとに使用する分析シートは1つだけに限定しましょう。
サンプルでは、各列のタイトルに「Y420」とか「Y510」という番号が振られています。この番号は分析シートの資料番号であり、その列の振替の内容が知りたいときには、書いてある資料番号から参照すべき分析シートがすぐにわかるという仕組みになっています。
それぞれの分析シートについては、今後順次サンプルを公開していく予定です。すでに公開済みのシートはカテゴリー「キャッシュフロー振替計算シート」をご確認ください。
また、弊社では各社の実情に応じた最適な分析シートのオーダーメイドを承っております。
1-4.定型的な振替と非定型な振替を分ける
キャッシュフロー計算書づくりに必要な振替には、毎期数字を更新するだけの定型的な振替仕訳と、その期だけしか発生しない非定型の振替仕訳があります。
非定型の振替仕訳は毎期必ず発生しますが、割合的には定型8:非定型2ぐらいです。様々な振替仕訳の中から定型的なものをいかに抽出するかが、毎期の作業時間を短縮するコツになります。
そこで振替の順番は、まず毎期発生する定型的な振替処理を整理して入力していき、最後にその期に発生したイレギュラーな振替をまとめましょう。
1-5.B/S振替の最後にポカヨケを設置する
上段の最右列には、B/Sの増減とキャッシュフロー換算の合計が一致していることを確認するポカヨケを設置しましょう。
B/S増減の金額と、そのB/S科目から発生したキャッシュフローの総額(純額)は一致しますので、ここが一致していなければ間違いがあるということになります。
「ポカヨケ」については、「経理高速化とミス防止を同時達成するExcelの【ポカヨケ】設置法」をご参照ください。
1-6.縦列にもポカヨケを設置する
上段(B/S増減差額のキャッシュフロー換算)と下段(各キャッシュフロー科目への振り分け)の列ごとの合計額は必ず一致しなければなりません。
よって、この一致を確認するポカヨケを仕掛けておくことで、ミスをタイムリーに把握し、またどの部分に発生しているか特定しやすくしています。
1-7.前期比較を行う
キャッシュフロー計算書作りは複雑なので、必要な振替が漏れていないかが怖いところです。
そこで、当期C/Fが集計されるセルの隣に前期のキャッシュフロー計算結果を貼り付けておき、前期と比べて何がどれだけ変化しているかがすぐに見られるようにしておきましょう。
キャッシュフローはP/Lに比べて波が激しく出やすいため、大きな増減が即ち間違いであるということにはなりません。しかし、ミスが潜んでいるところにはやはり大きな変動が起こりがちであり、きちんと説明が付く変動であるかを確認することで、タイムリーなミス発見につながります。
2.キャッシュフロー精算表のサンプルシートについて
2-1.分析シートについて
繰り返しになりますが、各B/S科目変動の分析シートについては今後公開していく予定です。すでに公開済みのシートはカテゴリー「キャッシュフロー振替計算シート」にまとめてありますのでご確認ください。
また、必要なものがございましたら、オーダーメイドにて作成を承ります。貴社の帳簿記帳方法や業務フローに最適な形式をご用意いたします。
2-2.正確性について
実在する企業数社の実数値を用いて計算チェックを行っておりますが、あらゆる状況に対応していることを確認しているものではありません。必ず決算前に過年度数値を用いて、計算の正確性を確認してください。当計算シートを用いたことにより発生した一切の損害について、弊社では責任を負いかねます。
なお、計算式の不備やバグを発見された場合は、弊社までご連絡をいただけますと幸いです。
2-3.二次利用について
著作権は放棄しませんが、利用者様の責任において無申告で修正・改変することができます。
ただし、著作物への添付、セミナーでの配布、インターネットでの配布等につきましては、必ず弊社までご一報をお願いいたします。
2-4.質問対応について
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