初めてキャッシュフロー計算書の作り方を学ぶ前に読む話

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初めてキャッシュフロー計算書の作り方を学ぶ前に読む話

経理パーソンがキャリアを重ねていく中で、大きな山になる業務がいくつかあります。業種にもよりますが、連結決算、税務調整、そしてキャッシュフロー計算書が代表的なものでしょう。

これらは月次決算の延長ではなく、これまでとは違った発想と手法でアプローチする必要があります。この発想法を体得できれば一気に成長できますが、それまでは何をやっているのか、いまいちピンとこないかもしれません。

特に、初めてキャッシュフロー計算書作成に着手する人の多くは、キャッシュフロー計算書作りに欠かせない「キャッシュフロー精算表」と呼ばれるワークシートの意味がわからず、挫折していきます。これは簿記1級などの資格試験にもほとんど出題されない(公認会計士試験ですら!)キャッシュフロー作成実務のテクニックですので、余計に面食らうことが多いでしょう。

キャッシュフロー精算表については「キャッシュフロー精算表の計算構造がスッキリわかる話」で詳しく解説しています。また、キャッシュフロー精算表のExcelサンプルシートを「キャッシュフロー精算表のサンプルシートと効率化ポイント」にて無料公開しています。

実はキャッシュフロー精算表は、キャッシュフロー計算書の基本概念さえ理解していれば、非常に合理的で便利なツールなのですが、コツをつかむまでの長さに嫌気が指す人も多いのが実情です。

そこで今回はキャッシュフロー計算書の基本概念にスポットを当て、「キャッシュフロー計算書の作り方を理解するための発想法」についてご説明します。これを頭に入れてから業務に当たれば、コツをつかむまでの時間は大幅に削減できるでしょう。

1.キャッシュフロー計算書作成 ≠ 資金収支集計

まず根本的なところですが、キャッシュフロー計算書とは何でしょうか。CashのFlowですから、直訳すると「資金の流れ」ですね。キャッシュフロー計算書は「会社の資金がどう流れているか」を示したものです。

こういうと、現金出納帳や預金残高を集計すれば出来上がりのような気がしてきますが、これは現実的ではありません。ある程度の規模のある会社の預金通帳は数日で1冊が終わるぐらい取引量が多いものです。これを一年分集計すると、一体何日かかるか分かりません。

さらにこの方法だと絶対にミスが入り込みますので、これをチェックする監査法人もたまったものではないでしょう。日ごろの鬱憤晴らしにはいいかもしれませんが・・・

いずれにせよ、キャッシュフロー計算書を作るときは入出金を集計したりはしません。初めてキャッシュフロー計算書を勉強する際は、これが入出金の状況を集計して作るものではないことを頭に入れておいてください。

2.キャッシュフローの捕捉方法

2-1.損益と収支の間にあるもの

さて、P/Lに計上された損益が、そのまま資金の収支ではないことは、敢えて言う必要もないことだと思います。問題は、何がその差を生んでいるかです。

たとえば売上高が100で当期の入金が90だった場合、差額の10はどうなっているでしょうか。何らかの費用と相殺されていなければ、期末の売掛金として残っているのが通常でしょう。

このように、損益と収支の差額には、必ずB/S科目の増減が存在します

2-2.キャッシュフロー計算書のアプローチ

実は、キャッシュフロー計算書は、このB/S科目の増減に注目して作成されます。つまり、

キャッシュフロー = 損益 ± B/S科目の増減額

という計算式のもとでキャッシュフローを補足します。この視点を理解することでキャッシュフロー計算書づくりの難易度は大幅に下がりますので、ぜひ覚えておいてください。

2-3.キャッシュフローを理解する計算式

それでは、B/S科目の増減がどのようにキャッシュフローに結びつくかを、等式を使って説明します。少し難しいので、読み流す程度で結構です

さて、言うまでもなく、B/Sの貸借は必ず一致します。つまり、

資産 = 純資産 + 負債

という等式が成り立ちます。

キャッシュフロー計算書は資産の中のキャッシュに注目しますので、資産を「キャッシュ」と「キャッシュ以外の資産」に分解すると以下の等式になります。

キャッシュ + キャッシュ以外の資産 = 純資産 + 負債

これを一定期間の増加額に直すと、以下の等式になります。

キャッシュの増加額 + キャッシュ以外の資産の増加額 = 純資産の増加額 + 負債の増加額

さて、出したいのはキャッシュの増減なので、左辺を「キャッシュ」だけにすると、以下の等式に変形できます。

キャッシュの増加額
   = 純資産の増加額 + 負債の増加額 - キャッシュ以外の資産の増加額

最後に、純資産の増加は「利益」と「利益以外の純資産の増加」に分解できます。したがって、

キャッシュの増加額
   = 利益額 + 利益以外の純資産の増加額 + 負債の増加額 - キャッシュ以外の資産の増加額

という式に変形できます。

この等式からわかることは、

  • 「利益額」は「キャッシュの増加額」を構成する
  • 「利益以外の純資産の増加額」は「キャッシュの増加額」を構成する
  • 「負債の増加額」は「キャッシュの増加額」を構成する
  • 「キャッシュ以外の資産の増加額」は「キャッシュの減少額」を構成する

ということです。減少の場合はその逆になります。

このことは、以下のようなB/Sを想定すると分かりやすいでしょう。キャッシュを差額概念として捉えることがポイントです。

キャッシュフロー計算書の概念図

3.B/S増減を❝分類❞するのがキャッシュフロー計算書

上述のとおり、キャッシュフローは損益とB/S増減で説明できます。キャッシュフロー計算書は、このように捕捉したキャッシュフローを「営業」「投資」「財務」の3つに分類したものにすぎません。

営業活動によるキャッシュフロー ・・・ 損益に関係するもの
投資活動によるキャッシュフロー ・・・ 固定資産投資等に関係するもの
財務活動によるキャッシュフロー ・・・ 資金調達等に関係するもの

つまり、キャッシュフロー計算書とは、B/Sの増減が、上記3分類のどれに関係するものかを明らかにしたものと考えてください。実際にはあとほんの少しだけ調整が必要ですが、基本的にはただそれだけの話です。

こう考えておくと、キャッシュフロー計算書の作り方をずっとシンプルに捉えることができます。

各分類の詳細については以下の記事にまとめております。
経理が知るべき営業キャッシュフローの全知識
経理のための投資キャッシュフローについての大解説
経理が学ぶ財務キャッシュフローのすべて

おわりに

まとめると、キャッシュフロー計算書はB/S科目の増減分析からキャッシュの収支を捕捉するというアプローチをとっており、B/S増減を「営業」「投資」「財務」に分類したものです。つまり、キャッシュフロー計算書作成とは、損益とB/S科目を分析することなのです。

詳しい説明は他の記事に譲りますが、キャッシュフロー計算書作りには「キャッシュフロー精算表」と呼ばれるワークシートを使います。このワークシートは、まさにB/Sの変動をキャッシュフローに変換する計算をしており、B/Sの変動要因をすべて説明できなければ、キャッシュフロー計算書が完成しないという作りになっています。

多くの経理パーソンは、キャッシュフロー精算表が何をやっているのかよくわからないまま着手し、挫折していきます。しかし、キャッフロー精算表がB/Sの変動をキャッシュフローに変換するシートであり、その理由はキャッシュフローが損益とB/S変動から成り立っているということさえ理解できていれば、キャッシュフロー計算書をマスターする時間も大幅に短縮されるでしょう。

もうワンランク理解を深めたいなら

理論理屈は上記のとおりですが、それがどのようにキャッシュフロー計算書作成に結びつくかを以下の記事にまとめています。ぜひご覧ください。

実践!簡単なキャッシュフロー計算書の作り方

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