有形固定資産のキャッシュフロー振替シート&考え方

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有形固定資産のキャッシュフロー振替シート&解説

今回はキャッシュフロー精算表のサンプルシートを前提に、有形固定資産の増減をキャッシュフロー精算表に入力するための計算シートを公開します。

有形固定資産のキャッシュフロー振替は、投資キャッシュフローだけでなく、営業キャッシュフローである減価償却費、減損損失、固定資産売却損益・除却損にも影響する非常に高度な科目です。
そのため、有形固定資産のキャッシュフロー振替がマスターできれば、キャッシュフロー計算書はかなりマスターに近づけるといっていいでしょう。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートは以下のアイコンをクリックするとダウンロードできます。


キャッシュフロー精算表のサンプルY510 有形固定資産のキャッシュフロー振替シート ver.1.1.1(Excelファイル)

※マクロは一切使用しておりません


以下ではこのシートの使い方と、有形固定資産の増減差額のキャッシュフロー上の考え方について解説します。

上述の通り、有形固定資産のキャッシュフロー振替は非常に高度で、理解のためにはキャッシュフロー計算に対するしっかりとした基礎知識が必要になります。まだキャッシュフロー計算書づくりに慣れていない方は、「初めてキャッシュフロー計算書の作り方を学ぶ前に読む話」と「実践!簡単なキャッシュフロー計算書の作り方」をしっかり読み込んでおきましょう。

1.有形固定資産のキャッシュフロー振替の考え方

キャッシュフロー計算はB/S科目の変動を分析して作成していきます。では、有形固定資産の変動要因にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを以下のT字勘定にまとめてみました。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シート

会社の取引形態や会計処理によって、「リース資産の計上」や「受贈による増加(無料で受け取った場合)」、「圧縮記帳による減少(直接減額方式による固定資産圧縮損の計上)」なども考えられますが、基本的には上記の項目がメインになろうかと思われます。

なお、増加要因である「資産除去債務計上」とは、上場会社等で「資産除去債務」という負債が計上された際に、固定資産を同額増加させることを示します。一般の中小企業ではほぼ問題にならないので無視していただいて結構です。

これを、各キャッシュフロー科目に振り分けると以下の通りとなります。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シート

「購入取得」、「減価償却」、「減損損失」、「除却」は比較的イメージしやすいと思いますが、「資産除去債務計上」と「売却」は少しイメージしづらいところです。

1-1.資産除去債務による増加額の考え方

固定負債である資産除去債務が新規に計上されるときは、同額の固定資産が計上されます。つまり、「資産の増加」と「負債の増加」が同時に同額発生し、キャッシュの収支は発生しません。

これをキャッシュフロー計算的に表現すると、「資産の増加はマイナスのキャッシュフロー、負債の増加はプラスのキャッシュフローをもたらすため、相殺されてキャッシュフローはゼロになる」と考えます。

資産除去債務の計上による固定資産増加はマイナスのキャッシュフローですが、必ず負債の増加によるプラスのキャッシュフローによって打ち消されます。そこで、一旦何らかのキャッシュアウト項目に仮入れしておき「資産除去債務」の分析時にマイナスのキャッシュフローを計上して打ち消します。

何らかのキャッシュアウト項目に仮入れすればよいため、実務上は「有形固定資産の取得支出」に混ぜてしまいます(本記事で公開しているサンプルシートも同様)。

また、ファイナンスリース取引における「リース資産計上による増加」も「リース債務の計上(プラスのキャッシュフロー)」と理論上相殺されるため、資産除去債務と同様に扱います。

1-2.売却による減少の考え方

有形固定資産を売却した場合、減少する固定資産の額は売却資産の「帳簿価額」であり、「売却額」ではありません。キャッシュフロー計算書の投資キャッシュフローには売却額を計上する必要があるため、差額を別途調整することが必要ということになります。

では、「売却資産の簿価」と「売却額」の差額は何でしょうか。それはずばり「固定資産売却損益」です。有形固定資産の増減分析とは別に、固定資産売却損益を営業キャッシュフローから投資キャッシュフローに振り替える手続きが必要になります。

2.有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの使い方

上記の基本的な考え方を元に、今回無料公開している「有形固定資産のキャッシュフロー振替シート」の使い方を確認しましょう。

2-1.有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの構成

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートは、入力するシートと計算結果を表示するシートに分かれています。

「Y511 入力シート」にデータを入力すると、「Y510 有形固定資産のCF振替」に計算結果が表示されます。また、入力シートは先日公開した「固定資産万能集計シート」と形式を合わせてあり、簡単に入力できるように工夫されています。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの使い方

2-2.有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの入力項目

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの入力箇所はたったの2か所です。それぞれ「簡単!経理が加速するExcelシート作りの8つの鉄則」でご紹介したルールに基づき、緑枠と薄黄色セルを入力していきます。

①有形固定資産の増減額を入力する

まず、「Y511 入力シート」を開き、B10~I13のエリアに「固定資産万能集計シート」の「有形固定資産計」の集計値を貼り付けます。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの使い方

上記では固定資産万能集計シートとの連携を重視し、取得原価から帳簿価額までそれぞれの額を入力する形式にしていますが、実際に使用する数値は帳簿価額だけですので、固定資産万能集計シートを使用しない場合は帳簿価額の欄だけを入力してください。

②売却損益を入力する

上述の通り、売却収入は固定資産簿価の増減だけでは足りず、売却損益を調整してあげる必要があります。

下記の欄にP/Lに計上されている売却損益を入力しましょう。基本的には組替後の数字を使えば問題ありません。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの使い方

2-3.自動でキャッシュフロー振替が計算される

上記2か所を正しく入力すると、「Y510 有形固定資産のCF振替」のシートにキャッシュフロー振替が自動で計算され、表示されます。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの使い方

下部のcheck欄がすべてゼロであることを確認してください。ゼロでない場合、増減分析の数値に問題があるか、どこかで数式が壊れていることになります。

なお、合計の前に一列余計に列を設けてあります。これは会社の業界などの特殊性によって、売却損益以外に簡単な調整が必要な場合に使用します。
たとえば、固定資産受贈益が発生している場合は、以下のように調整しましょう。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの使い方

「Y510 有形固定資産のCF振替」に、キャッシュフロー精算表への入力方法が表示されますので、キャッシュフロー精算表に転記しましょう。

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートの使い方

3.有形固定資産のキャッシュフロー振替シートについて

3-1.カスタマイズについて

有形固定資産のキャッシュフロー振替シートは、固定資産万能集計シートからの転記を前提に作成されています。他の資料から転記する場合は、元資料の形状に合わせて入力しやすいようカスタマイズされることをお勧めします。

なお、弊社では業務フローや記帳ルールの改善も含めた経理高速化・効率化コンサルティングを実施しております。万能集計シートを使ってより効率的に業務改善を図りたい場合はぜひご連絡ください。

お問い合わせはこちらから

3-2.正確性について

実在する企業数社の実数値を用いて計算チェックを行っておりますが、あらゆる状況に対応していることを確認しているものではありません。必ず決算前に過年度数値を用いて、計算の正確性を確認してください。当計算シートを用いたことにより発生した一切の損害について、弊社では責任を負いかねます。

なお、計算式の不備やバグを発見された場合は、弊社までご連絡をいただけますと幸いです。

3-3.二次利用について

著作権は放棄しませんが、利用者様の責任において無申告で修正・改変することができます。

ただし、著作物への添付、セミナーでの配布、インターネットでの配布等につきましては、必ず弊社までご一報をお願いいたします。

3-4.質問対応について

本記事のコメント欄より質問を受け付けております。
決算大詰めでお急ぎの場合はお電話ください。

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㈱経理救援隊 代表取締役 古旗 淳一(公認会計士・税理士)


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