
前回は、キャッシュフロー精算表に入力すべき利益剰余金の振替数値について、単体決算で使える計算シートを公表しました。
今回はその連結決算用を公表します。若干応用し、非支配株主に帰属する当期純利益の扱いと、非支配株主への配当について加えてあります。
Excelシートは下記のアイコンをクリックするとダウンロードできます。
Y800 利益剰余金のキャッシュフロー振替シート ver.1.1.1(Excelファイル)
※マクロは一切使用しておりません
以下ではこのシートの使い方と、連結決算における利益剰余金の増減差額のキャッシュフロー上の考え方について解説します。
キャッシュフロー精算表のサンプルは「キャッシュフロー精算表のサンプルシートと効率化ポイント」よりダウンロードできます。
1.利益剰余金のキャッシュフロー振替シートの使い方
連結用の利益剰余金のキャッシュフロー振替シートは、単体用と同様に、①P/Lの状況、②利益剰余金の配当の状況、③CFへの影響の3つの要素から構成されており、①と②に正しく数値を入力することで、③の欄にキャッシュフロー精算表に入力すべき内容が表示されます。
1-1.【P/Lの状況】の入力事項
「P/Lの状況」では、「税金等調整当期純利益」「法人税、住民税及び事業税」「法人税等調整額」「非支配株主に帰属する当期純利益」「親会社株主に帰属する当期純利益」の5つのP/L科目の金額を、連結P/Lに計上されているとおりに入力します。
1-2.【利益剰余金の配当の状況】の入力事項
当期中に行った利益剰余金の配当の額を入力します。親会社と連結子会社のそれぞれを入力してください。
親会社の配当状況は単体用と同じ要領で入力します。
一方の連結子会社の配当状況ですが、「会社名」に配当した子会社名(チェック用)、「配当日」に配当の日(期中であることのチェック用)、「配当額」に配当の総額を入力します。
そして、このうち親会社(親会社グループ内の会社)に配当された額を「うち親会社配当額」に入力します。連結修正において受取配当金と相殺された金額です。
これを正しく入力すると、差額でグループ外に配当された金額、すなわち「非支配株主配当額」が算出されます。
1-3.【CFへの影響】の表示内容
P/Lと配当の金額を正確に入力していると、【CFへの影響】欄にキャッシュフロー精算表に記入すべき科目と金額が自動で表示されます。
赤い枠内にキャッシュフロー精算表に記載すべき科目・金額が表示されています。該当する列(サンプルではY800)の該当する科目行に金額を入力しましょう。
なお、キャッシュフロー精算表への転記は、精算表のExcelファイルに貼付用シートを追加し、そこに貼付けた上で、SUMIF関数でキャッシュフロー精算表に数字を飛ばすと便利です。この方法の詳細はいずれ書く予定ですが、SUMIFによる数字飛ばしは非常に経理高速化できるテクニックです。SUMIF関数に関しては「経理を高速化するSUMIF関数の基本と5つの超便利機能」をご覧ください。
なお、システムで入力する方は右側のCF仕訳をご参照ください。
2.連結における利益剰余金のキャッシュフロー変換の考え方
利益剰余金の増減は、過年度修正などの例外的なケースを除き、「親会社に帰属する当期純利益」と「親会社が実施した利益剰余金の配当」、によって増減します。
「連結子会社が実施した配当」は、親会社に対する額は受取配当金と相殺(利益剰余金が子会社から親会社に移動しただけで連結に影響なし)、非支配株主に対する額は非支配株主持分と相殺(連結で考えればそもそも利益剰余金ではない)であるため、いずれも連結利益剰余金の増減要因にはなりません。
さて、「親会社に帰属する当期純利益」はさらに、「税金等調整前当期純利益」「法人税、住民税及び事業税」「法人税等調整額」「非支配株主に帰属する当期純利益」に分化することができます。
連結子会社の配当について
「連結子会社による非支配株主への配当」については、連結グループからキャッシュが流出しているため、連結キャッシュフロー計算書において「非支配株主への配当支出」として把握する必要があります。この配当の原資は、連結グループから見れば「非支配株主持分」であるため、「非支配株主持分の増減」として増減B/Sの消込要素に加えられます。
今回公表したシートでは「利益剰余金の配当」という観点から連結子会社の配当も入力事項に加えていますが、連結パッケージからの集計作業によっては利益剰余金のシートから外し、別途「連結子会社の配当分析シート」を用いてキャッシュフロー振替計算を行う方法もあります。貴社の業務フローに応じて調整されることをお勧めします。
3.キャッシュフローの分析シートについて
3-1.カスタマイズについて
キャッシュフロー振替分析は上記シートをそのまま使用しても使えますが、それぞれの会社の業務フローや記帳ルールに合わせてカスタマイズすることで、より高速化・効率化を図ることが可能になります。ぜひカスタマイズしてご活用ください。
なお、弊社では業務フローや記帳ルールの改善も含めた経理高速化・効率化コンサルティングを実施しております。より効率的に業務改善を図りたい場合はぜひご連絡ください。
3-2.正確性について
実在する企業数社の実数値を用いて計算チェックを行っておりますが、あらゆる状況に対応していることを確認しているものではありません。必ず決算前に過年度数値を用いて、計算の正確性を確認してください。当計算シートを用いたことにより発生した一切の損害について、弊社では責任を負いかねます。
なお、計算式の不備やバグを発見された場合は、弊社までご連絡をいただけますと幸いです。
3-3.二次利用について
著作権は放棄しませんが、利用者様の責任において無申告で修正・改変することができます。
ただし、著作物への添付、セミナーでの配布、インターネットでの配布等につきましては、必ず弊社までご一報をお願いいたします。
3-4.質問対応について
本記事のコメント欄より質問を受け付けております。
決算大詰めでお急ぎの場合はお電話ください。
コメント